不妊治療に期待されるTS細胞とはいったいどういうもの?
最近こうした細胞分野の研究はよくニュースなどでも見るようになっていますが、今いち、細胞の研究というのはわかりにくいものです。
しかし、細胞の研究は治療にも役立つことになりますし、医療分野の躍進の為には必要不可欠といわれています。
今この細胞分野の研究で注目されているのがTS細胞で、この研究の中で成功したTS細胞の作成事例は不妊治療をしている方にも朗報となる可能性が高いのです。
東北大学大学院医学系研究科で成功したヒトの胎盤に分化できるという幹細胞、「TS細胞」に注目が集まっています。
ヒトの胎盤で分化するTS細胞とは?
胎盤を構成している細胞はたくさんありますが、このうち、トロフォブラストという細胞は高い増殖性と多分化能があり、この細胞の遺伝子について研究に成功したものです。
トロフォブラストという細胞の遺伝子を網羅的に解析したところ、人の身体の中で増殖を抑制するという因子を特定されました。
この因子の情報をもとに色々な培養条件を作り、その中からヒトTS細胞を作製したという事です。
不妊治療に利用出来るのではないかとされているのは、ホルモン分泌や母体の血管再構築を行う細胞について分化能があることがわかったからです。
作製去れたヒトTS細胞は長期培養でき、5か月の間培養が可能で、培養の後についても、ホルモン分泌が行われること、栄養やガス交換の機能を持つこと、さらに子宮の中で母体の血管を再構築する細胞に分化能をもっていることがわかったといいます。
もう一つの可能性、他家移植
移植などが必要な時、自分の細胞を利用出来ない場合もありますが、その時、期待されるのがiPS細胞つまり人工多能性幹細胞のように、人の細胞を利用した他家移植です。
今回開発されたヒトTS細胞は、この人工多能性幹細胞によって進められている他家細胞用の細胞ストック同様に活用できるという期待も寄せられています。
他家移植というのは、ある個体の細胞や組織等を自分以外、別の個体に移植するという事です。
iPS細胞は他人に移植しても拒絶反応を起こしにくい特殊な細胞とされていて、実際に世界初、加齢黄斑変成の患者さんに治療目的で他家移植が行われています。
ただ拒絶反応が起こりにくいという非常に大きなメリットがあるiPS細胞も、細胞培養のためにかなりの時間を要するというデメリットも持っています。
ここにTS細胞を利用出来るとなれば、移植のために活用できるストック細胞としても利用出来、移植の世界は大きく変わっていくことも考えられるのです。
これから先、研究がさらに続けられていけば、不妊治療に画期的な細胞としてニュースにも聞くようになることも期待できるのです。